研究目的・内容

研究目的

 健康増進法に基づく特定給食施設には、利用者に応じた適切な栄養管理が期待されているが、その主体は給食であり、食事が栄養計画の品質通りに提供されることは重要となっています。また、食事の品質を担保するためには、深刻な労働力不足等に対応でき、かつ効率的で調理、衛生、環境等に配慮した生産システム及び調理システムが求められています。

 こうした中、近年、効率的・合理的な給食運営を目的に、カミサリー/セントラルキッチンシステム(C/C)や、クックチル、通称ニュークックチル等のレディフードシステム(RF)が導入されてきました。

 C/Cは、複数の施設で食材料を一括購入、保管、配送する生産システムで、流通段階の省略、大量購入により経費の削減、品質安定化等が可能となります。RFは、調理・急速冷却後、厳密な温度管理で保管し提供時刻に合わせて再加熱する調理システムで、作業が平準化される上、C/Cにも対応しています。しかし、医療施設等、多食種を取り扱う施設でのC/C適用の方法論はほとんど整理されていません。また、合理化を目的にさらに導入増が予想されるニュークックチルについては、定義が曖昧で施設により認識が異なり、嗜好面でも課題が多くなっています。

 そこで本研究では、全国の代表施設への視察・ヒアリングを行い、課題整理を行うとともに、RFによる調理物の栄養的・嗜好的評価と定義の明確化を行いました(2年目まで)。さらに、事務作業軽減化に向けた帳票類の削減等の検討を行い、特定給食施設において、より効率的・効果的な給食管理、栄養管理を推進していくための方策を検討しております(3年目)。

 一方、医療施設における入院中の食事は医療の一環として位置付けられていますが、国の調査では大幅な赤字運営となっており、制度の持続可能性を高める観点から、より効率的・効果的な運営のための検討が急務となっております。

 現在、医療施設に特化したアンケート調査を実施中であり、これから実施する病院機能別のグループインタビューと併せて課題を整理しております(2年目まで)。

 さらに、この結果や「日本人の食事摂取基準」等を踏まえ、給食部門で広く適用可能な栄養基準量等の案を作成し、適用できる施設規模、医療機能等の区分の検討と、基準案に基づき給食運営を行う際の院外・院内業務を整理を行います(3年目)。併せて、基準案が適用できる/できない医療施設のそれぞれにおける、より効率的・効果的な給食管理業務の体制、手順等について提案いたします(3年目)。

期待される効果

本研究では、下記を通じて特定給食施設における適切かつ持続可能な栄養管理の推進のための基礎資料の作成を行います。

1)医療施設以外(学校、高齢者施設等)及び医療施設における給食管理業務(栄養基準量の設定方法、食種数、提供食数、個別対応食数、レディフードシステムの導入状況と課題等)の実態、国内外の院外調理等カミサリー/セントラルキッチンシステム(C/C)の実態等の整理 

2)特定給食施設の食事における統一化された品質評価方法の提示

3)特定給食施設の事務作業の軽減化に向けた帳票類の削減案の提示 

4)食事提供数や食種が比較的安定した医療施設等が利用できる給食管理手法の提案 

 これらの成果は、厚生労働行政の課題である健康日本21(第二次)中間評価後の栄養・食生活分野の取組の推進における基礎資料となるものです。また、本研究結果を踏まえた特定給食施設に係る通知等の見直しにより、特定給食施設及び医療機能別の給食管理の状況に合わせた効率的・効果的な業務が可能となります。ひいては、入院時食事療養制度の持続による入院患者の治療への寄与や、質の高い栄養管理による健康寿命の延伸、健康格差の縮小にもつながることが期待されます。